僕自身、こんな気持ちで手に取った本が「子どもの心のコーチング(著 菅原裕子)」です。
本記事では、同書を参考に、子供に対するコーチング手法についてまとめました。
具体的には以下のことをまとめています。
子供の自信をどう引き出すか?
親としてどの様なコミュニケーションをとるべきか?
著者である菅原裕子氏は元々人材開発コンサルタントとして活躍し、現在はNPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事として、「ハートフルコミュニケーション」を実践しています。
(HPより抜粋) 企業の人育てと自分自身の子育てという2つの「能力開発」の現場での体験をもとに、子どもが自分らしく生きることを援助したい大人のためのプログラム-ハートフルコミュニケーション- を開発。各地の学校やPTA、地方自治体の講演やワークショップでこのプログラムを実施し、好評を得る。
それでは早速、本書のレビューに入ります。
成長を引き出すために自信が必要
子供は成長する力を持っている
子供が成長するために、親が特別な何かを与える必要はありません。 なぜなら、子供の中には既に成長の答えがあるからです。
本書でも
実は、何も知らないと思える生まれたての子どもの中に、すでに自立して生きていくために必要な全ての知恵の芽が存在しています。その芽は、親が邪魔さえしなければ、立派に育つように仕組まれているのです。
という考え方をしています。
別記事でも触れましたが、成長の基礎は子供の中にある、という考え方はモンテッソーリ教育にも通ずるものがあります。
子供には生まれつき成長する力が備わっている、という考えは育児の真理なのでしょう。
ミケランジェロの名言と育児の共通点
僕は複数の育児本を読む中で、ミケランジェロの逸話を思い出しました。
ミケランジェロといえば、ダビデ像を始めとする彫刻の代表作がありますが、ミケランジェロも
・全ての石の中には既に彫像があり、彫刻家の仕事はそれを発見することである。
・大理石の中には既に天使がいる。彫り続けることでその天使を自由にする。
といった言葉を残しています。
つまり、ミケランジェロも「答えは石の中にある」という考え方をしていたのです。
これを育児に置き換えると、答えは子供の中にあり、それを上手く引き出してあげることが親の仕事である、といえるのではないでしょうか。
子供が秘めた成長の力を引き出すために親ができることは、しっかりとコミュニケーションをとること、そして子供に自信をつけさせてあげることだと考えます。
自信が子供の成長を引き出す
子供の成長を引き出すためには、自信が必要です。
なぜなら、自信があることで多くのことにチャレンジをすることができ、失敗も含めて様々な経験を積むことができるからです。
多くの経験を積むことによって子供は成長していきます。
例えば、自信がない子供は「失敗したらどうしよう…」と、新しいことへのチャレンジから逃げてしまいます。
チャレンジから逃げてしまうと、成長の機会をみすみす逃がしてしまうことになります。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という格言の通り、人は失敗してこそ学ぶことができます。
挑戦してこそ失敗を重ねることができ、結果的に成長につながりますが、そのためには自信が必要なのです。
自信を引き出す2つの力
自信は人から与えられるものではありません。内面から自発的に育まれるものです。
「自信」と一言でいいますが、自信には「自己肯定感」と「自己効力感」の2つの要素が含まれています。
親はこれらの感覚が子供の中で育まれるような環境作り、コミュニケーションを行う必要があります。
以下に解説をします。
自己肯定感を高める
自己肯定感とは
自己肯定感とは、以下のような感覚です。
自己肯定感(じここうていかん)とは、自らの在り方を積極的に評価できる感情、自らの価値や存在意義を肯定できる感情などを意味する言葉であり、自尊心(英語: self-esteem)、自己存在感、自己効力感(英語: self-efficacy)、自尊感情などと類似概念であり同じ様な意味で用いられる言葉である (Wikipediaより)
つまり、自分の「存在」に対する自信です。
自己肯定感が必要な理由
自己肯定感が必要な理由は、全ての行動力の源泉であるからです。
自分の存在に対する自信を有することで、失敗を過度に恐れなくなります。
例えば、十分に自己肯定感が育まれていないと、失敗をしたときに他人からどう思われるか、といったことを気にしてしまいます。
しかし、自己肯定感が育まれている場合には、他人の目を過度に恐れません。
自分が失敗してもそれを受け入れることができる強さがあるので、新しいことに挑戦する行動力が身につくのです。
他者に認められることで自己肯定感は育まれていきます。
自己肯定感を育むためには、子供にとって最初の、そして最も身近な他者である親が肯定することが必要です。
自己肯定感を高めるために家庭でできることは?
自己肯定感を育むためには、親が肯定してあげる必要があります。
本書では、とにかく無条件に可愛がること、を推奨しています。
具体的には、スキンシップをしたり、「好きだよ」といった言葉を直接投げかけることが効果が大きいとのことです。
人から愛されることで、人を愛することができるようになります。
人を愛することができれば、自分自身を愛することができます。
自己肯定感を育むスタートは、親から愛されることです。
「甘やかす」との違い
「甘えを受け入れる」と「甘やかす」は全く異なるものだと著者は言います。
「甘えを受け入れる」は子供の成長を促すサポート、「甘やかす」は親が自己満足のために行うヘルプであり、子供の成長につながりません。
自己効力感を高める
自己効力感とは
耳慣れない言葉ですが、自己効力感とは以下の定義になります。
自己効力感(じここうりょくかん)またはセルフ・エフィカシー(self-efficacy)とは、自分がある状況において必要な行動をうまく遂行できると、自分の可能性を認知していること (Wikipediaより)
自己効力感はアルバート・バンデューラというカナダの心理学者が提唱したものです。
自己肯定感が「存在」に対する自信であるのに対し、自己効力感は「能力」に対する自信です。
自己効力感が必要な理由
自己効力感が必要な理由は、ポジティブにものごとに取り組めるようになるからです。
小さな成功体験を積み重ねることが自信につながり、どんどんチャレンジしていくことができます。
例えば、跳び箱で3段が跳べるようになったから次は4段にしよう、簿記3級に受かったから次は2級を受けてみよう、といった形です。
成功体験や、失敗をしても乗り越えた経験を積むことで、更に新しいことにチャレンジすることができるようになります。
自己効力感を高めるために家庭でできることは?
本書では「責任を学ばせる」ことが推奨されています。
子供にできることは子供に任せて、その結果の責任を子供自身が負うことを経験させるのです。
そうすることによって、結果は自分次第でコントロールできるという実体験を積むことができます。
この経験を積んだ子供は、結果を出すための心構えや手段を身につけるので、問題解決能力が磨かれていきます。
本書では、寒い日に上着を着るのを嫌がる子供の例や、朝起きないで学校に遅刻しそうになる子供の例を交えて解説されています。
わが家でも、何かするのを子供が嫌がることがよくあります。
保育園に行きたくない、保育園から帰りたくない、ご飯を食べたくない、お風呂に入りたくない…などです。
この様な場合は絶好の教育のチャンスですが、子供が言うことを聞かないとカッとなってしまいがちなので、コミュニケーションの取り方には留意する必要があります。
子供とどう向き合うべきか
ダメな例
ありがちなのが、子供に「ダメ」とか「やめなさい」と怒鳴ってしまうケースです。
親の方も疲れていたりして、ついイラっとして声を張り上げてしまう、といった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
著者は否定語や命令語は使うべきではない、といいます。
子供は「白いキャンバス」であり、それをどんな内容で埋めてあげるかは親の責任です。ネガティブな内容で埋めてしまうと、子供の自己肯定感が育まれないため、否定語や命令語を使うべきではありません。
そのために重要なのは、まず感情的に反応しない、ということです。
感情的に反応しない
怒りのスイッチを切る
皆さんも、つい大きな声で「ダメ!」とか「やめなさい!」などと叱りつけてしまう経験があるのではないでしょうか。
ですが、叱ってよいのは命にかかわることや、人に危害を加えたときのみであり、それ以外で叱ることは害はあっても良いことはない、と著者は断言します。
親が大きな声や命令語・否定語を使うのは子供を親の望むように支配したい、あるいは自分が元から怒りたい気持ちを持っており、子供を怒る口実に使っているだけだといいます。
後者の考え方は、アドラー心理学にも通じるものがありますね。
とはいえ、子供も突発的に行動しますし、親もいつも冷静にいられるとは限りません。
とっさに怒らないように、親としても対策を講じておく必要があります。
怒りを逃がす
例えば、子供がコップを割ってしまった、せっかく買ったお菓子を床に落として号泣…といった状況に出くわすと、ついカッとなってしまうことがあると思います。
ただ、ここで感情に任せて怒ってしまうと子供にネガティブなセルフイメージを持たせてしまうので、親の怒りを逃がす必要があります。
本書では「アー怒ってきた!怒りそう!」などと言葉にしつつ、自分の感情や状況を空に向かって吐きだしたり、ベランダなどその場から離れる、といった方法が紹介されています。
たしかに、人は7秒しか怒れないといいますので、怒りを空に発散させつつその場を離れてしまう、ということは有効と思います。
また、叱る前に、
それとも自分が怒ったり子供を支配したいだけでは?
と自問自答することで、冷静さを取り戻すきっかけになります。
このあたりはアンガーマネジメントの分野となります。
育児にはアンガーマネジメントは必須ですので、また記事を作れればと思います。
”しつけ”とは
子供の成長を引き出すためには、感情に任せて叱るのではなく、理性的に”しつけ”をする必要があります。
具体的なやり方をざっくりと説明すると、
その行動をするまで待つ
その行動ができたら褒める
ということなります。
褒める際には、「Iメッセージ」を使うと効果的です。
例えば部屋の片づけができた場合には、「部屋がきれいになってお父さんは嬉しい/お父さんは助かるよ」といった内容です。
逆の言葉は「Youメッセージ」です。
これは「○○ちゃんはお部屋を片付けられて偉いね」といった内容になります。
人のモチベーションが上がるのは、褒められたり怒られたり、ご褒美をもらうときではありません。
人の役に立つことが喜びとなり、モチベーションが中から湧き上がってくる、と著者は言います。
そのためには、「あなたのおかげで私は嬉しい。ありがとう」というIメッセージを積極的に使いましょう。
話を聞く
親が反射的に怒ったりせず、ある程度怒りをコントロールできるようになったら、子供の話を聞きましょう。
子供の話を聞くメリット
人は誰かに悩みを話すと気持ちが落ち着き、受け入れられた気持ちになります。
皆さんも誰かにグチを聞いてもらって気が楽になった経験があるのではないでしょうか。
特に子供はまだ感情の整理が下手なので、子供の気持ちを落ち着かせたり、自己肯定感を育む意味でも話を聞いてあげることが大事です。
親にとっても話を聞くことで子供の状況や思考プロセスを知れるメリットもあります。
ダメな例~きき耳~
例えば、最近始めたばかりのピアノをやめたい、といった時に親としてどの様に対応するべきでしょうか。
もうやめるの?なんで?こないだ始めたばかりでしょ?いいよ。ダメ。などでしょうか。
…これらの回答は子供の否定的な反応を招く、と著者はいいます。
自分の価値観に邪魔されて、相手の話を聞いているようで、聴けていないからです。
この状況を著者は「きき耳」と名付けています。
具体的な聞き方
子供が悩みを打ち明けたり、自分の意見を言ってきたりした場合に、親はどの様に聞けば良いでしょうか。
具体的なやり方①黙る
本書によれば、まずは黙ること、とのことです。
人は怒りのスイッチが入ってしまうと、相手の話が耳に入ってこなくなります。
何かを言いたくなったときこそ、グッとこらえて2-3秒黙ることが重要です。
確かに逆の立場になってみればその通りで、こちらが話し終えたとたんに何か言われると、「本当に聞いてくれているのか?」と大人でも疑問に感じますよね。
先ずは受け止める、そのために「黙る」ことが大事です。
具体的なやり方②オウム返し
黙った後は、相手の発言のオウム返しをしましょう。
オウム返しとは、相手の発言をそのまま繰り返すことです。
例えば、「学校で嫌なことがあって…」と話したら「(少し黙って)学校で嫌なことがあったんだ」と返すことです。
肯定も否定もせず、相手の次の言葉を引き出すことができます。
具体的なやり方③感情に寄り添う
感情に寄り添うとは、相手に共感することです。
例えば子供が「悲しい」と言えば、そのまま「悲しいんだね」と感情を言葉にしてオウム返しをすることも有効です。
直接的に悲しい、と言わなくても「それは悲しかったよね」と代弁してあげることも大事です。
また、オウム返し以外にも姿勢や目線、態度など、言葉以外の方法で共感していることを示しましょう。
例えば、体がそっぽを向いていたり、目線が全くこちらを見ていなかったり、腕組みをしていたりダラリとした姿勢であると、子供にも聞いていないことが伝わり、話をしてくれなくなってしまいます。
しっかりと子供の方を向いて、目をみて話を聞くことが大事です。
コーチングの流れ
本書で特に参考になるのは、コーチングの技術を用いた子供との会話例が紹介されています。
ポイントを下記します。
子供に寄り添いながら話を聞く
子供に共感しながら、子供から話を引き出します。
話しながら言葉にすることで、子供が自分の状況や気持ちを再認識できるメリットもあります。
一緒に解決策を練るかどうか提案する
親と一緒に解決策を考えるかどうか、という問いかけをすることで、親が関与する心の準備をさせます。
明確に「自分で考える」「ほっといてほしい」と言われない限りは会話を続けた方が良いでしょう。
どうしたいか聞く
ここはとても重要なポイントです。
親が解決策を提示してあげるのではなく、自分としてどのようにしたいかということを聞いてあげましょう。
自分で出した結論であれば納得感もありますが、他人から提示された施策は納得できなかったりやらされ感が出てしまいます。
自分がどうしたいか、という気持ちを整理させることが大事です。
選択肢を洗い出す
選択肢は複数あった方が良いです。
一つよりも二つ以上の選択肢があった方が比較もでき、効果的で納得感のある解決策を選ぶことができます。
パッと思い浮かばなくなるまで選択肢を上げましょう。
その中から一つを選ぶ
子供が複数の選択肢を提示できたら、どれを選ぶか、子供と話しましょう。
親が選ぶのではなく、子供が自分で出した選択肢の中から、自分で選ぶというプロセスが重要です。
それを選んだらどのようなことが起きそうかを考える。
選んだ選択肢を選んだら、どの様なことが起きそうかを子供に考えさせましょう。
特にネガティブな影響が想定されるのであれば、あらかじめ想定をしておくことが心の準備につながります。
実行の背中を押し、見守ってることを伝える
自分で決めた選択肢とはいえ、いざ実行するとなれば勇気もいりますし、障害も出てきます。
「何かあれば言ってね」と親が見守っていることを伝えることで、その不安を和らげて上げることができます。
本書では、習い事をやめたい子供とのコミュニケーションが例として挙げられております。
詳細は割愛しますが、具体的なやりとりが非常に参考になりますので、興味がある方は手に取って読んでみて下さい。
まとめ
ここまでの内容を簡単にまとめます。
・自信を高めるには「自己肯定感」と「自己効力感」が必要。
・これらは子供を愛し、チャレンジの機会を与えることで育まれる。
・子供の中に成長の基礎がある。それをコーチングの手法で引き出すことが子供の成長につながる。
いかがでしたでしょうか。
本記事では割愛しましたが、本書はコミュニケーションの具体的なワーディングや、会話の具体例などが豊富に記載されており、非常に参考になりました。
また、内容もコンサルタントをやっていただけあって分かりやすく書かれています。
子供のコーチングに興味がある方は、是非手に取って読んでみることをオススメします!
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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